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耳管開放症

耳管開放症は耳閉塞感、自声強聴、呼吸性耳鳴を伴い、稀な疾患として考えられていたが、1990年代より日常よくみられる疾患であることがわかり、インターネットの普及とともに脚光を浴びだした疾患です。

鼻の奥と耳を結ぶ耳管が緩んでいるために生じます。
緩んでいる耳管を試験的に閉鎖することにより症状が軽減し、様々な症状に関与が解ってきました。主症状の他に難聴、耳痛、小声、息苦しい(自己抑制)、鼻声、笑えない、のどの違和感、頸凝り・肩凝り、頭痛・頭重感、三叉神経領域の異常感などに関与しています。

目次

耳管開放症の報告

  • Jago (1867 )自身が忘れ得ぬ体験
  • 高原(1956)2症例 稀な疾患として本邦初報告。
  • 山口(1995)87症例 病態・日常よくみられる疾患
      (2000)224症例 耳管開放症の隠れた症状(耳管開放症の閉鎖試験)

その症状・病態が徐々に解明されてきた。 
ブッタの苦行はまさに耳管開放症の症状です。

壮絶なブッタの苦行

断食で痩せ、無息の禅定では、口と鼻の呼吸を止めると、内にこもった息は凄まじい音をして耳から流れ出た。風気が頭の頂を衝き上げるので、鋭い刃に衝き刺されるような痛みを感じるという。在る時には内の空気が陶器の破片で刺すように烈しい頭痛をおこす。

「養生の実技:つよいカラダでなく」
五木寛之より

釈迦の生年月日、没年不明、諸説で紀元前463-前383年説と前565-前485年説

耳管開放症の原因および誘因

  • 体重減少:急激な体重減少、繰り返すダイエット
  • 痩せ:BMIの低値
  • 疲労、長時間の立位
  • 脱水:夏場の発汗、ジョギング、テニス、透析
  • 中耳炎    
  • 妊娠:妊娠5,6ヶ月、痩せ、体重減少の既往。
  • 上咽頭への放射線照射       
  • 顎関節症、リウマチ、シェーグレン症候群、myoclonus様
  • 睡眠時無呼吸症候群:nasal CPAP使用
  • 低血圧
  • 生理的未熟な耳管:compliant tube
  • 退行変性の加わった耳管:耳管軟骨の石灰化、耳管腺組織、粘膜下組織の萎縮
  • 先天性?遺伝?:親子(4/1050,0.4%)

耳管開放症の症状

耳管開放症の付随症状

肩こり症の改善とともに耳閉塞感が消失あるいは軽減したと報告。(中川1977)

  • はっきりと聞き取れない。
  • しゃべることができない。
  • 笑えない。はっきり見えない。
  • 顔半分三叉神経領域の違和感。

耳閉塞感:聴力正常、鼓膜正常

簡単な検査法: 鼓膜の動きを観る。

(Yamaguchi N. et al: Patulous Eustachian tube: Endoscopic observation of the tympanic membrane.... Recent Advances in otitis media. 1994)

オトスコープ聴診:耳管開放症の確認

耳管開放症の主症状のうち自声強聴、呼吸性耳鳴をオトスコープで確認する。
実際に音を聴いて認識することが大切です。

  • 呼吸音:息を吸ってはいて
  • イー・ビー・ムー、バビブベボと発声   
    (高齢者・難聴者はマミムメモというように言うように指示しても指示した発声音がわからないことが多い。)
  • 重症例は呼吸により症状悪化のため自己抑制により呼吸が浅くなり、発声により自声強聴のみでなく耳痛を伴うため小声となる。息苦しい・鼻声。
  • 耳管閉鎖試験により症状が改善する。

 

耳管開放症の治療的診断

耳管開放症の症状は耳管が開放しているが故に生じると考えられるため、耳管を閉鎖した状態にすることにより症状が軽減するか、耳管を閉鎖し調べる極めて単純な方法である。
(耳管周囲には解剖学的に重要な器官があるため、内視鏡下に慎重に行うことが望ましい。)

耳管咽頭口へキシロカインを塗布した綿棒挿入
耳管腔に沿って無理なく挿入

耳管開放症の治療的診断の結果

  • 話が明瞭に聞こえるようになった。
    (音は入ってくるがはっきりしなかった。)
  • 会話ができるようになった。
    (話をすると頭に響いて辛く、話をするのが 鬱陶しかった。)
  • 自分の声の大きさの程度がわかる。
  • 自分の声に戻った。
  • 呼吸をするのが辛かったが息が楽にできるようになった。
  • 頭の中がボーとしていたが、頭がクリアーになった。
  • 顔半分の違和感(三叉神経の症状)が消失し、楽になった。
  • ハッキリ見えるようになった。
  • 頭痛、頭重感が消失した。
  • 笑いが戻った。顔の表情が戻った。
    (笑うと響いてしまい笑えなかった。)
  • 著明な耳閉塞感が軽減し頚凝り、肩凝りが消失または軽減した。

耳管開放症隠蔽症例

  • 中耳炎に関与する症例: 滲出性中耳炎、鼓膜内陥症、急性中耳炎・乳突蜂巣炎など
  • 感音難聴を併合する症例: 高齢者、低音障害型感音難聴、急性感音難聴など
  • 咽喉頭異常感症
  • 小児症例
  • NCPAP
  • 他疾患が主因: 感音難聴、筋性耳鳴、拍動性耳鳴、聴覚過敏症、低髄液圧症候群、三叉神経に及ぼす頭蓋内腫瘍など。
  • 花粉症後期の緩い耳管
  • 気象病

高齢者の耳管開放症

  • 高齢者の中に負荷音圧が著明に低い耳管開放症症例がある一方、負荷音圧の低下の少ない症例も見られる。
  • 音響法の負荷音圧は安静時の状態で測定され、安静時に耳管が閉鎖している症例は負荷音圧の低下が少ない。
  • 安静時負荷音圧が正常でも、一度開くと開放するタイプは鼓膜の呼吸性移動の認められることがある。

耳管開放症の治療

  • 生理食塩水の点鼻(Shambaugh,日本耳鼻咽喉科全書高原滋夫1953)
  • 耳管咽頭口より薬剤噴霧通気(Bezold末、ルゴール山下)
    塗布(Bezold末、アセチルサリチル酸)、
  • 漢方:加味帰脾湯(石川)
  • 耳管咽頭口粘膜下へ組織注入
    シリコン、テフロンの注入
    アテロコラーゲンの注入(佐藤)
    自家脂肪注入術(守田)
  • 耳管結紮術(高橋)
  • 耳管咽頭口へ組織挿入:ジェオフォルム,メロセル (守田,山口)
  • 鼓膜チューブ留置術
  • テープによる鼓膜強化(村上)
  • 耳管鼓室口より軟骨,耳管ピン挿入術(小林)
  • 体位を含めた生活指導も考慮する。

 

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